さあ、離婚しましょう 始めましょう
「いつだっけ四人でグランピングに泊まり行ったのって」
「いきなりどうしたのよ、森の?」
「そうそう」
私もその時のことを思い出す。男性陣二人の運転で流行のグランピングに行ったことを。
「まだ、佐和子と宗次郎君が付き合ってなかったから、二年半ぐらい前? あれ?その時付き合うことになったんだっけ?」
私の中の記憶も曖昧だ。佐和子から気持ちを聞いていた私は、二人をうまくいかそうと奔走していた。そして尋人は乗り気ではなかった。それは……。
「あの時、楽しかったな」
「そうだね」
それ以上、その旅行のことを話すことはなかったが、きっと私たちは違うことを思っていたと思う。
手伝いをしてくれた佐和子が帰ったあと、一人になった部屋では小さなビーズクッションに頭を埋めた。
いつもこの時間ならば、尋人と一緒に夕飯を食べている時間なのに。
食欲がなくて何もしたくなくて、私は昼間佐和子が話していた旅行を思い出していた。