さあ、離婚しましょう  始めましょう
そこまで思い出した時、聞きなれない音がして私はハッと現実に戻った。
それはこの家のインターフォンで、初めて聞くその音がなんとなく不思議な感じがした。
引っ越したことなどほとんどの人に言っていないし、近所の人か大家さんだろうか?
そんなことを思いながらとりあえず扉を開けると、ドンと何かにぶつかった。

「おい」
え?
上から聞こえたかなり低い声に、その主を仰ぎ見る。

「お前、誰かも確認せずに出るなよ。それにその恰好」

「尋人……」
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