さあ、離婚しましょう 始めましょう
まさか想像もしていなかった人物に、私の口からは名前が零れ落ちる。そしてその言葉の意味を考える。
今までは一緒に住んでいた時は、部屋着もかなり気を使っていたが、今は一人だ。
荷解きが面倒だったこともあり、適当な短パンに大きめのTシャツ一枚という姿だった。
なんとなく少し伸びたTシャツの胸元に手を持っていきながら、私は視線を外して問う。
「どうしたの?」
それに対する答えはなく、彼は無言のまま家へと上がりこんだ。
「ねえ? 何かあった? 私忘れ物でもした……」
狭い廊下を先に歩いていく尋人を私は追いかける。すぐにたどり着いた部屋を見渡してから、カーテンを開けてベランダを確認している。
「まあ、ギリ合格かな」
ため息交じりに発した言葉の意味が解らず、私は立ちすくんでいた。