さあ、離婚しましょう  始めましょう

「三条」
そんなとき後ろから柔らかな声で私を呼ぶ声にハッとした。
「金沢さん」
会社では苗字で呼ぶ彼に、私もいつも彼を金沢さんと呼んでいた。
「どうした?」

新入社員の時からかわらない、優しい声に私は少し笑みを浮かべた。
「何がですか?」
そう答えるも彼の視線にもふたりの姿が入ったようだった。少し見つめた後、宗次郎君は私の顔を覗き込んだ。
「酷い顔してる」
「え!」
確かに眠れなくてクマもできて酷い顔をしてる。メイクで何とか出来ていた思っていたのに、そうではなかったのだろうか。

「俺たちの事聞いた?ごめんな、せっかく日にちあけてもらっていたのに」
申し訳なさそうに言う宗次郎君に私は首を振る。
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