さあ、離婚しましょう 始めましょう
「俺、そこまで佐和子と一緒だったぞ」
その言葉に宗次郎君の顔色が変わる。
「まさか聞いて?」
「だろうな。泣きそうになりながら出て行った」
尋人のその言葉に宗次郎君は、舌打ちをして走って行ってしまった。
「なんだよ、追いかけられるじゃないか」
ぼやくように尋人は言うとため息をついた。
いきなり二人きりになってしまい、私は居心地が悪くて仕方がない。
「弥生、ごめん」
申し訳なさそうに聞こえた尋人の声に驚いて顔を上げれば、もう目の前に彼がいて驚いてしまう。
見上げて視線が交わり、そらすこともできなくて見つめあうような形になってしまう。
「何に対して……」
そう伝えると尋人は少し思案する表情の後、私にゆっくりと言葉を発した。
「俺と一緒に飯に行こう」
どういうつもりか全くわからない。
友達として、そして仮初の夫婦として、そして今、名前を付けられない関係になった気がする。
もう一度始めれば、何かが変わるのだろうか。
「弥生」
もう一度名前を呼ばれ、ドクンと胸が音を立てる。
やはり私はこの人が好きだ。
そっと手を取られ驚いているうちに、私はそのまま手を引かれフロアを後にした。