さあ、離婚しましょう 始めましょう
「弥生? どうした?」
その声で私は現実に引き戻された。
「昔を思い出していただけ」
「そうか」
それ以上、何も話すことなく私たちは無言で紅茶を飲み終えた。
なんとなくしんみりした空気を壊したくて、私はにこりと微笑むと尋人を見た。
「それにしても初めのころは尋人のこと最低な人だと思ってたな。そんな人と結婚してたなんて不思議な気分」
目の前のティーカップを取って、ぬるくなった紅茶を一口飲めば、尋人も思い出したのか口を開いた。
「あの頃の弥生の俺を見る軽蔑した眼差し。今でも頭に浮かぶよ」
尋人もクスクスと笑う。そんな彼に一息ついて頭を下げた。
「今はとても感謝をしています。この一年、なんだかんだ楽しかったよ」
「俺も楽しかったよ」
そう言ってくれるだけで、十分かもしれない。