さあ、離婚しましょう 始めましょう
私なんかじゃ尋人の失恋の傷を癒せなかった。でも幸せだった。
結婚してからキスすることも、もちろん抱き合うこともなかったけど、いつも隣で私に笑いかけてくれる尋人といられて楽しかった。
「明日、引っ越し屋さん朝一にくるから」
その言葉に尋人が驚いたような表情を浮かべた。
「もう決めてあったのか? 家は? 俺も一緒に探すって話してただろ?」
離婚の話がでたのは、この一年で今日が初めてだ。
しかし、私は結婚して同居が始まった時から、離婚した後のことは考えていた。
私の部屋はもう段ボールの山だ。そんなことも知らなかったでしょ?
少しだけ意地悪な言葉を言いたくなるも、それをグッと私は耐えた。