さあ、離婚しましょう  始めましょう
ぎこちない雰囲気のまま小さな部屋にいると、心臓の音が聞かれてしまいそうで、私は急いでテレビをつけた。

『大好き……』

「え!!」
お互いの声が一緒になり顔を見合わせた後、視線をテレビに向ける。

今流行りの恋愛ドラマ。確か不倫の話だったような気さえするが、画面の中の女性が大胆に男性に抱きついた。

どうしてこのタイミングでこんな場面なの。
泣きたくなる気持ちを耐えながら慌ててリモコンに手を伸ばすと、尋人もそれを取ろうとしていたらしく手が重なった。

「ごめん」

今度は尋人がすぐに私の手を離した。それが少し寂しく思ってしまうのは私の勝手な思いだ。
狭い床の上になぜか正座するような恰好になってしまう。まさか尋人まで緊張してる? 
そんな考えが頭をよぎりそっと彼を見れば、何もない壁に視線を向けていた。
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