さあ、離婚しましょう  始めましょう

「じゃあ、また連絡する」
「え?」
「きちんと鍵かけろよ」
私の返事はかなり間抜けな声だったと思うが、尋人は何も言うことなく、柔らかな笑みを浮かべて家から出て行った。

その姿を見送ると、ずるずる私は床に座り込んだ。

「何、この甘酸っぱいの……。いくつよ。私たち」

こんな自分に驚きすぎる。いい年をして結婚までして、手を握られただけで真っ赤になるとか。

中学生のような甘酸っぱさが、離婚の後にあるとは想像もしていなかった。

これから”お付き合い”はどうなるのだろうか。期待と不安が入り混じった。
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