さあ、離婚しましょう  始めましょう

それでも俺との付き合いを了承してくれた。
それだけで今は十分だ。
宗次郎のことは好きじゃない。そう言ってくれた弥生。
それだけでこの一緒に住んだ一年は無駄じゃなかったのかもしれない。


そんなことを考えながら、俺はタクシーを拾える大通りまで冷静さを取り戻す努力をしつつ歩き始めた。

タクシーに乗り、ぼんやりと夜景に視線を向けていたつもりだが、窓ガラスに映った自分がにやけている。
慌てて表情を戻すと、誰も見ていないのにコホンと咳ばらいをして表情を引き締める。

弥生を好きだと自覚をしたのはいつだろう?
なんとなく宗次郎、佐和子と四人で遊ぶようになり、弥生が宗次郎を見ていることが多いなと思ったのがきっかけかもしれない。

佐和子はそのころ完全に宗次郎への気持ちがまるわかりだったが、弥生は控えめだがなんとなく感じることがあった。
それに、教育係だったこともあり、宗次郎と弥生は本当に仲が良かった。
俺といるより、宗次郎とたくさん話す印象があった。
< 93 / 173 >

この作品をシェア

pagetop