【完結】和菓子職人との恋は、甘いようで甘くない?
「いらっしゃいませ、角野屋へようこそ!」
「いらっしゃいませ!」
ここは明治時代から続く老舗和菓子屋【角野屋(かどのや)】
その和菓子屋で店員として働く私、春風菜々海(はるかななみ)は、この和菓子屋に勤めてもうニ年ほどになる。
「菜々海さん、こんにちは」
「あ、塩野様!ご無沙汰しております」
「ご無沙汰!元気してた?」
塩野花南(しおのかな)様は、角野屋によく来てくれる常連様で、塩野様のお爺様の時代からの常連さんだ。
いつも何かとご贔屓(ひいき)にしてもらっている。
「今日は黒糖饅頭とかぼちゃ饅頭を二十個ずつもらえるかしら?」
「二十個ずつですね、かしこまりました。今お包みしますね」
「ええ、お願いね」
花南様のお家は、先祖代々伝わる由緒あるお寺を経営していて、花南様のお爺様とお父様はお寺のご住職様なのだ。
お寺は安産祈願や合格祈願など、様々な理由で訪れる人が多い。その中でも特に、お寺の宝物(ほうもつ)たちは文化財にも指定されており、国が守ってくれているらしい。
花南様はそこの孫娘にあたる。 花南様自身は、コンサルタントの仕事をしており、日本と海外を行き来していることが多いそうだ。