【完結】和菓子職人との恋は、甘いようで甘くない?
なんか、この状況……。
「まるで、あの時みたいだな……」
俺が熱を出して倒れた時と、全く同じだな。相手が逆だけどな。
「菜々海、お前こそ無理すんなってーの……」
看板娘のお前が倒れたら、意味ねぇだろう。
お前はうちの看板娘、なんだからよ。
「ん……ゆづ、きさ、ん……っ」
「菜々海?」
菜々海の顔を覗き込むが、寝ているようだ。
「寝言……なのか?」
にしても、なんで俺が看病してるって分かるんだよ、コイツは。
俺の声でも聞こえてるのか?……なんてな。
「タオル変えないとな……」
熱が下がるまで、ここにいるしかねぇな。コイツを今一人にする訳にはいかねぇし。
病人放って置く訳にはいかねぇからな……。
「菜々海……」
お前って本当、可愛い寝顔してるんだな……。可愛いよ、お前は。
……って、俺はこんな時に何を考えてるんだ! バカか、俺は!
「本当に……」
コイツと一緒にいると、俺は本当に変になる。俺が俺でいられなくなる。
なんなんだ、本当に……。俺はコイツといるだけで、どうかしてしまってるな。
「菜々海……」
これってまさか……。恋って、ヤツなのか?