ご近所の平和を守るため、夫のアレが欲しいんです!

1.これ

 平日木曜日の二十二時。ご飯も食べて、歯も磨いて、お風呂に入ってパジャマになって、あとはもう寝るだけの、のんびりタイム。

 リビングに戻ると夫がテレビを観ていた。すでに彼の方が先にお風呂に入り済み。こちらはパジャマで無くて、スウェット派だ。そこにつつっと寄って、ぴとっとくっついてみる。結婚してあっという間の二年弱。こんな動作を自分から仕掛けるだけでも、未だ胸はときめいてしまう。

「んー?」

 特に意味のあるわけでも無い声だか唸りだかを発する夫、慶一(けいいち)さん。目線はテレビに釘付けのまま。一見素っ気ない態度だけれど、私にくっつかれた方の腕を回して肩を抱いてくれる。その手の動きが柔らかくて、優しくて、思わずふふっと笑ってしまった。ゆっくり首を傾けて、彼の胸に自分のこめかみ辺りをぐりぐりと押し付ける。

「なに甘えてんだよ」

 目線は相変わらずテレビに。口調も素っ気なく。なのに肩を抱く手がきゅっと強まるから、私の鼓動もちょっと速くなる。

「別に、いいでしょ」

 私も素っ気なく言い返すけれど、彼に抱き付いているので説得力が無い。

「体温高い。眠いの?」

 聞かれてムッとする。子供か、私は? 男女の六歳差は夫婦になると関係無くなるぞ。というか、慶一さんの方が子供っぽい時いっぱいあるし。

「眠くない」

 そして頬と頬を擦り合わせる。慶一さんのちょっと伸びた顎ひげがチョリチョリとした刺激を私に伝える。

「ああもう、ニュース観てたのに……」

 ぼやきながらもリモコンに手を伸ばして、律儀にテレビの電源を落とす。そして私の唇にチュッと口付けると、慶一さんはにやりと笑った。

紗江(さえ)、誘ってる?」
「……うん。誘ってる」

 言いながら恥ずかしくなって、目を伏せた。くすりと小さく笑い声が聞こえて、今度は深く口付けられる。慶一さんの唇が薄く開くけれど、彼の方からは来てくれない。誘うんならお前からこっちに来い、ってところだろう。私はそっと舌を彼の口内に差し入れた。

 彼の口の中にお邪魔して、舌と舌を擦り合わせる。……反応無し。

 この人はー! って思いながら、舌の根本に潜り込んで起き上がらせるように絡ませる。これでどうだ⁈

 鼻息荒く頑張っていたら、またくすくすと笑われた。

「紗江の、下手くそ」

 そして慶一さんの舌が私の舌に絡みだす。舌先でからかうように突いてみたり、上顎をくすぐるように触れてみたり、歯列をなぞってみたり、口の中を好いように弄られて、私の頭がぼうっとしてくる。口の端から涎がこぼれてきて、慶一さんはそれをすするとついでに下唇を甘噛みして、舌でなぞりあげた。うん、それも好き。

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