イケメン保健室・病弱少女の恋愛相談
 入院生活は冬を終えて中学三年になり私はようやく退院することが出来た。せっかく減らした体重は40kgまで増えて、月日の空白は友人と距離を離した。あの憧れの彼さえも……。
 最近付き合い始めたと言う、彼の彼女は昔の私よりもぽっちゃりとしている。つまりは私の努力は全くの無駄で、失ったものの方が多かったと言うこと。退院しても私はすでに普通の生活の仕方がわからなくなっていた。

 ***

 志望校よりもかなり偏差値の下の高校に入学した、四月。あれから学校に行きづらくなってしまい、勉強もついてはいけなかった。それに元来の志望校にはあの彼がいるのがわかっていたから。
 私は全てを忘れたくって、同じ中学からは誰も進学しない学校を選ぶ。新しい環境になったら私は昔のように食べられるようになるのか、それは希望でもあり恐怖でもある。痩せの魅力は私を放さず、呪縛に未だ囚われたまま。体重は退院したときの40kgから減らして、36kg近辺をうろうろとしている。何があっても40kgは超えたくないけれど、本当はもっと体重が必要だってわかってはいるのに。

「結風、お昼はお弁当にしなさいよ。あなた放っておくとまた食べないようになるでしょう?」
「と、友達と食べるから学食が良いの。一人だけ弁当とか気まずいし」
「本当に食べているんでしょうね? また入院なんて困るわよ」

 困るのは私じゃあなくお母さんだ。入院したら何かと手間がかかって、仕事に集中することが出来ない。でも私は食べたくないから、入院する身体と普通の身体を探っている。夕飯は見張られるようになってしまったから、半分くらい食べて、その代わり学校の最寄り駅は二つ前で降りて歩いて行く。無駄にとってしまったカロリーを消費するために。
 入学してしばらくたっても私に友人は出来てはいなかった。一緒に学食行こうって誘ってもらったけれど、食べたら太る。また嘘をついて断って、だから私は結局孤独のままで……でも、太る位ならひとりぼっちで良い。スカートからのぞく脚は骨張って細くないと、手首は余裕で指がまわるくらいじゃないと……。
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