イケメン保健室・病弱少女の恋愛相談
 昼休みの終わりに教室に帰る。しかし体育に参加できる程の体力はなくて私は見学をしていた。貧血気味の身体でぼうっと授業風景を眺めている。バスケットボールを楽しそうにしている同級生、私は運動音痴だけれどみんなとボールで遊ぶのは嫌いじゃなかった。小中学生の頃は放課後疲れるまでボールで遊んで、小遣いを持ってアイスやクレープを食べながら帰る。いまではもう信じられないが、あの頃はそれが楽しかったのだ。でも、甘い物なんて食べたら太る。太るくらいなら、やっぱりまだ一人が良いかな。ああ、なにやってるんだろ、こんな生活をいつまでも続けて、いつまでも孤独のまま過ごすなんて。

 ***

「……大森! 大丈夫か」

 その声に驚いて目を開けた。なに、何があったのかがわからない。ただ口の中がじゃりじゃりと砂の味がする。起き上がろうにも制服も砂だらけで、周りを無数の野次馬に囲まれていた。校庭を走って善養寺先生がやって来て、そのときようやく、全校集会を校庭で行っていたことを思い出した。たちっぱなしが堪えたのか、目の前が真っ暗になって脚から崩れ落ちた。周りの注目も気にする余裕もなくて。
 先生が身体を支えてくれて、ゆっくりと起き上がる。いつの間にか擦りむいた膝からはうっすらと血がにじんでいた。ひそひそと聞こえたのは「痩せすぎ」とか「気持ち悪い」とか。そんな言葉も初めてじゃない、でもやっぱり聞いていて嬉しい言葉じゃないから、先生の力を借りずに立ち上がろうとする。けれど、どうしても身体に力が入らなくって、また目の前がチカチカとして暗くなり始めていた。また倒れるのかな、滑稽すぎて周りに笑われている気がする。その中で先生は陰口を叩いた生徒をにらみつけて、私を抱き上げ視線なんて気にせずに早々に保健室に連れて行ってくれた。

「ねえ、どうして私の名前を知っているの?」

 保健室のベッドの上で再びの質問をする。全校生徒も新入生もそんなに少なくはない学校で、先生は私の名前を呼んだから。

「そりゃあ、保健室の先生だからな。それとまあ……中学時代、入院していたって?」
「あ……」
「一応ね、教師の中では要注意と言われてるんだよ」

 がっかりとして力が抜けた。先生は仕事で覚えていたわけで、別に私に特別な感情があったわけじゃない。そんなの当り前だし、期待した私が馬鹿だった。
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