排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
「あー!ボロ負けだったー」
そう言ったのは、一年生の滝林洋介だ。洋介は一年の割に骨格がしっかりしていて、基礎体力がありそうだ。短い髪は色素が薄いのか、やや茶色がかった色をしていて、日本人離れした顔立ちをしている。口では悔しがっているが、負けたことを気にした様子も無く、コートにごろりと横になった。そんな洋介の隣から、気弱そうな声が聞こえてくる。
「全然歯が立たなかったな……」
悲し気に、気弱そうな声を出したのは、同じく一年の小池流星だ。男子にしては少し長めの髪を、後ろでハーフアップにしていて、ひょろりと手足が長い。一年生二人は負けたことをあまり気にしていない様子だったが、二年生と三年生は違うようだ。
誰も何も話そうとしない。
そのため、一年生コンビの会話が無くなると、体育館がシンと静まり返る。
そんな中、莉愛は自分の中に生まれた、違和感の糸口を探っていた。
何だろう、この感じ……。
ノートを見ながら、莉愛は疑問に思った事を聞くため、口を開いた。
「あの……ちょっと良いですか?」
莉愛が話しかけてくるとは思わなかった拓真は、一瞬呆気にとられた様子だったが、すぐに返事を返した。
「どうしたの?姫川さん」
「その……皆さんのポジションの事なんですが、今のポジションは誰が決めたんですか?」
「えっ……?いや、別に誰が決めたと言うわけでもなく、自分がやりたいポジションをやっているんだけど……」
「なるほど」
莉愛は拓真の言葉に納得した。