排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
*
試合開始のホイッスルが鳴った。
伊勢崎中央高等学校、高野の強烈なジャンプサーブがくり出される。
「ドンッ」
先ほどのアップの時よりも、大きな音を立てて、ボールが後ろへと転がって行った。
サービスエース……。
動くことの出来ない犬崎部員達。
「ナイスサー高野」
「ナイスサー」
伊勢崎中央高等学校の応援団が、喜びの歌を歌い出す。
うわー。
すごいな。
応援歌とかもあるんだ。
チラリと犬崎の応援団の方へ視線を向けると、悔しそうな理花と美奈の姿が見えた。
これは明日にでも応援歌を作って来そうだなと思いながら、コートに視線を戻す。
高野がもう一度ボールを高く上げ、ジャンプサーブを打ち込んでくる。バレーコートの左奥の隅に食い込むようなサーブが飛んできたが、拓真と場所を入れ替わった瑞樹が軽いステップでボールに対応した。強いサーブの威力を最大限にまで弱められたレシーブは、体育館の天井目掛けて上がっていく。それが莉愛の目にはスローモーションの様に見えた。
上がった!
「流星、たたき込め!」
瑞樹の声に反応した流星が、高飛びで培ってきたバネとジャンプ力を使って、ボールを叩き付けた。それは見事に相手コートのサイドラインギリギリに決まった。瑞樹と流星のツーアタックが初めて決まった瞬間だった。そこからは点差が開かない状態が続いた。犬崎が得点すれば伊勢崎中央が追いつく。
みんな、ここが踏ん張りどころだよ。
ここで24点マッチポイントを取ったのは伊勢崎中央だった。もう一点取られれば1セット取られてしまう。
すかさず莉愛はタイムを取った。