排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
汗だくで、息を切らした皆が戻ってくる。莉愛は用意していたスクイズボトルを一人一人に手渡していく。それからどんな言葉を掛けようか考えていると、1セット取られたことは仕方ないと、拓真がすぐに切り替え、話し合いを始めた。
頼もしくなったなー。
初めて会った頃がウソのようだ。あの頃は負け癖付いているのか、負けることが当たり前で、勝ちたい気持ちはあるのに勝てずにいた。心の底で勝てないと思っているから、自信も無く、すぐに諦めて気持ちでも勝てずにいた。そんな皆が、1セット取られても、心折れること無く前を向いている。
「ドンマイ、ドンマイ俺らやれているよな。あの伊勢崎中央とやり合えてる。次のセットは取り返す」
拓真の強い意思に引かれるように、皆も声を掛け合う。
「うん。まだまだやれるよ。ボールは見えてる」
「だよな。いける、いけるよ」
「絶対次のセット取る」
流星、洋介、充も水分を補給しながら声を掛け合い、莉愛の方を見た。みんなの瞳は、何の曇りも無く輝いている。
いける。
まだ1セット取られただけだ。
莉愛はベンチに座るスタメンメンバーの前に立つと、嬉しそうに笑った。
「諦めている人はいる?」
莉愛の問いに全員が首を横に振った。
「良かった。そんな奴がいたら、ビンタしてやろうと思ったけど大丈夫そうね。レシーブの基本をおさらいしよう。まずは腰を低く、重心は前に、かかとは浮かせる。それから相手のコースを予測して、そこに入れるかだよ。特訓の成果を私に見せて」
今までの特訓を思い出そうと、みんながブツブツと何かを呟いている。それは地獄の日々を思い出し、脳内が恐怖で支配された結果なのだが、莉愛はそれに気づかない。みんなが集中していると喜ぶ莉愛。
「さあ、みんな次のセット取り返すよ」
莉愛の声に現実に戻された犬崎メンバーが、気を引き締めるため、一斉に声を張り上げた。
「「「シャーー!!!!」」」