排球の女王様~私に全てを捧げなさい!


 思わず、試合をしていた犬崎の選手も、伊勢崎中央の選手も手を止め、そちらに視線を向けた。すると大地が右手を高く上げているのが見えた。

 狼栄勝ったんだ。

 狼栄は決勝進出の切符を手に入れた。

 私達も負けてはいられない。

 グッと手を握りしめ、大地を見つめていると、大地がこちらに気づき、二人の視線が交わる。すると大地が、高く上げていた拳を莉愛の方へと、向けてきた。

 『決勝で待ってる』

 大地の声が聞こえた気がした。

「みんな、狼栄が待ってるよ。まだいけるよね?ファイナルセットはうちがもらうよ」

「「「おおーー!!」」」


 どっちも引かない点の取り合い。

 トスを上げてはスパイクを打ち、レシーブで取り、またトスを上げる。繰り返される動作。しかし、何一つ同じ動作は存在しない。

 ボールを上げろ……上げ続けろ。

 足を止めるな。

 ボールを見て、追い続けろ。

 指先でいい、ボールに触れろ。

 
 30点を超え、なおもデュースが続く。

 そして、長い戦いに終止符が打たれる。


「拓真行け、ぶちかませ!!」 



「ドンッ」



 拓真の放ったバックアタックが、相手コートに叩き付けられ、大きくバウンドし、ボールは体育館の隅に転がって行った。




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