排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
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「あっ、王者狼栄のお出ましだぜ」
「うっわー。すっげー、迫力。気合い入ってるな」
王者狼栄の風格は凄まじく、周りにいる者を圧倒した。側にいるだけで肌がひりつくような空気が漂う。
「おい、向こうから対戦相手のお出ましだぜ」
「マジか、鉢合わせ」
狼栄を前にして、莉愛は無視することも出来ず、狼栄の前へとやった来た。緊迫感が漂う中、狼栄大学高等学校と犬崎高等学校がエントランスにてにらみ合いとなった。
狼栄の赤尾も今日ばかりは、いつものヘラヘラとした表情を引き締めている。緊迫した状況の中、赤尾が口を開いた。
「良くここまで来たね。犬崎がここまで来るとは、正直予想していなかったよ」
拓真は、赤尾や狼栄のメンバー達から放たれる威圧感に負けないよう、目を逸らさずに答えた。
「それはどうも。こっちは今、勢いがありますから、このまま優勝頂きますよ」
それを聞いた大地が一歩前に出た。
「それはどうかな?勢いがあるのはこっちも変わらない。優勝して莉愛……女王を奪うから覚悟しろ」
大地の言葉と熱い瞳に、莉愛の体が熱くなった。
「そうはいくか。女王は俺らが守りぬく!」
一触即発の緊張状態に、回りで見守る人々の背から、冷たい汗が流れ落ちたのだった。