排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
「すごい声援です。今、ベンチにやって来たのは犬崎高等学校のマネージャー、女王こと姫川莉愛さんの登場だ。それにしても、すごい声援です。選手以上の人気と言っても良いでしょうか?」
「そうですね。それにしても今日の莉愛は、いつにも増して美人だな」
翔の物言いに、首を捻る谷。
「あれ?そう言えば、姫川さんと犬崎のマネージャーさんは苗字が同じですね」
「ああ、俺と莉愛は兄妹ですからね」
「そうでしたか。それで女王ですか?」
「いや、俺と兄妹だから女王って訳では無いですよ。ほら、見て下さい。女王のお出まし……コートに立ちますよ」
莉愛はアップをしているみんなの元まで行くと、サーブを打ち始めた。すると『ズドンッ、ズドンッ』と、重いボール音が次々に聞こえてくる。これには谷も、開いた口が塞がらない、と言った表情を見せる。
「こ……これは、すごいですね」
「ねっ。すごいでしょう。うちの莉愛は男子顔負けのサーブをバンバン打ってきますよ。他にもトス、レシーブ、スパイク、何でも出来るんです。けど、本人は選手としてコートには立ちたがらないんですよ」
「そうなんですか?もったいないですね」
「そう思いますよね。大人達は必死になって莉愛を選手としてコートに立たせようとしたのですが、ダメでした。何があったのか、バレーボールに触れることもしなくなった莉愛が、バレーの世界に足を踏み入れた。そうさせてくれたのが、犬崎の男子バレーボール部員達で、俺はあいつらに感謝しているんですよ」
「そうでしたか」
「はい。莉愛にバレーボールの楽しさを思い出させてくれたあいつらに、感謝しかないんです。あっ、すみません……もう、時間ですね」
「あっ本当ですね。これから一人一人の名前が呼ばれ、スタメンのメンバー紹介です」