排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
ここで中継の谷に切り替わる。
「いやー。犬崎の姫川格好いいですね。『捧げなさい』痺れますね。そう言えば犬崎高等学校の横断幕は『捧げよ』でしたね」
「はー。我が妹ながら格好良くて、美人だー。自慢の妹です」
「あはは……。あっ、ここで試合開始のホイッスルです。サーブは狼栄のキャプテン赤尾正隆。ここは思いっきりいきたい、赤尾ボールを高く上げた。そしてジャンプサーブ、これは……入ったー。サービスエース!!」
最初に得点したのは狼栄だった。そこから狼栄が1点また1点と得点を増やしていく。ここで大地にサーブの順番が回ってくる。
「ズドンッ」
大地渾身のジャンプサーブが、大きな音を立てて、体育館の床を転がって行った。遠くから見守る応援団も、大地の強烈なジャンプサーブにゴクリッと喉を鳴らし、言葉を失う。シンと静まり返る体育館に、ボールの転がる音だけが響いた。それから一拍おいて、歓声が上がる。
「すっげー。あんなの取れるのかよ」
「無理だろ。触れるのも無理だよ」
もう一度、大地のジャンプサーブが……来る。「ズドンッ」床にめり込むようなジャンプサーブ。
大地は本気だ。
私達を初めから、全力で潰しに来ている。
手加減なんて一切なし。
相手チームに彼女がいようが、試合において、手を抜くなんて事はしない。
大地が全力を出してくれていることが、莉愛は嬉しかった。
私の彼氏はホントに、格好いい。
そんな大地に、ほうっと見惚れそうになるが、顔の筋肉を引き締める。
「ズドンッ」体育館に響く音。
次元が違う……スーパーエース大地との格の違いを見せつけられた気がした。
それでも、私達も負けない。
食らいついてやる。
そう思っていても、点差は縮まるどころか開いていく。初めは6点差だった点差が気づけば12点差となっていた。