排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
「さあ、2セット目が始まります。犬崎高等学校の反撃はあるのか?1番大崎大地からのサーブから始まります」
「ナイスサー」
狼栄の控え選手から聞こえてくる声に合わせて、大地がボールを高く上げる。バックラインのかなり後ろから助走を開始した大地は、エンドラインから流れるようにジャンプすると、体をしならせ手のひらでボールを叩き付けた。
上手い。
バックアタックは攻撃力が高い反面、コントロールがしにくいと言われている。しかし、大地のバックアタックのコントロールはかなり良い。
「ドゴンッ」
破壊力のあるジャンプサーブが犬崎のコートに沈む。
悔しそうに、奥歯を噛みしめる瑞樹の顔。
「くそっ!次は絶対に取る」
そう言った瑞樹を見つめた大地が、真っ向勝負を挑む。大地がもう一度ジャンプサーブをくり出すと、瑞樹目掛けて放った。目の前に飛んでくるボールに会わせ瑞樹がステップを踏む。
「バシンッ」
ボールは瑞樹の手首に当たり床に沈むことは無かったが、後ろへ大きくそれていった。それを拓真が追いかけるも、大きく後ろへ跳ね上がったボールに追いつくことは出来なかった。
それでも、触れることが出来た。瑞樹はビリビリと痺れる両手をグー、パーと何度が繰り返し実感する。
取れる気がする。
いや、違う。
次こそ取る。
瑞樹は大地のジャンプサーブを上げるため、ボールに集中する。腰を低くし、基本のレシーブ姿勢をとった。大きく深呼吸をすると、大地のサーブが自分の数歩前で落ちると予測し、瑞樹は俊敏に反応し数歩前に出た。するとドンピシャで大地のジャンプサーブが瑞樹の腕の中に飛び込んできた。
「バシンッ」
今までとは違う、肌に当たる音。
それは、ボールが綺麗に上に上がった事を示していた。
上がった!