排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
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第3セットは拓真のサーブから始まった。
拓真が放ったサーブを狼栄の熊川が上げる。それを赤尾がトスで上げ大地へ。後ろから走ってきた大地のバックアタックが炸裂する。ここに来て、今日一番のバックアタック。これには瑞樹も対応出来なかった。それでも犬崎は大地のスパイクを攻略するべく、果敢に挑む。点を取っては取り返す。息をするのも忘れてしまうほどの攻防戦が続いた。
中継の谷も手に汗を握り絞め、この熱気を会場の外にいる人達にも伝えようと、興奮しながらも、言葉を選び情報を伝える。
「素晴らしい。どちらも引かない。攻撃の狼栄、守備の犬崎。後1点で第3セットが決まります。さあ、第3セットを取ったのは……王者狼栄ーー!!」
「「「シャーー!!」」」
大地達が声を上げると、応援団も声を張り上げた。
「いやー、ホントに素晴らしい試合ですね。どちらが勝ってもおかしくない。姫川さん、どうですか?」
「両者とも引きませんね。次のセットを狼栄が取れば狼栄の優勝。しかし取られれば、第五セットへもつれ込む。犬崎は後が無いですね。犬崎は何処まで踏ん張れるかですね」
そんな話をしていると、谷が何かに気づいたように翔に問いかける。
「ところで姫川さん、時々狼栄の大崎選手が犬崎の姫川さんに、指をさしたり、拳を前に出したりする仕草が気になるんですが……?やはり、犬崎を煽っているんですかね?」
「あー。違うと思いますよ。あの二人は付き合っていますから、莉愛に対するアピールでしょうね。莉愛はたまったもんじゃないでしょうが……」
「これは新情報です。それで今朝のエントランスホールでのにらみ合いで、犬崎が女王を守り抜くか、狼栄が女王を奪い取るかって言う話しに繋がってくるわけですね」
「あっ、谷さんも、今朝のエントランスでの話を聞いたんですね。そうですね。兄としては妹を取られる感じで複雑ですが……。女王を守りぬくか、奪うのか、そこも見ものですね」