排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
両校の応援団も、力の限り応援を続けた。
選手の背中を押すように。
「トンッ」
その時、祐樹のフェイントが決まった。それは流れるようなフェイントで、狼栄の選手は反応に遅れ、ネットの際に落ちたボール。
ホイッスルと共に審判の声が響く。
「第4セット犬崎高等学校」
中継の谷が興奮して立ち上がった。
「上手い!近藤祐樹のフェイントが決まったーー!!第四セット取ったのは犬崎だー!素晴らしい。どちらも引かない、攻撃の狼栄、守備の犬崎。まるで春高本戦のような緊迫感。犬崎がここまで狼栄を追い詰めると誰が思っていたでしょうか?本当に素晴らしい試合だーー!!」
ベンチでは疲れ果てた拓真達が、頭にタオルを掛け、荒い息を繰り返していた。第4セットが終わり、みんなの限界が近づいていた。それでも私は言わなくてはいけない。ここで、優しい言葉なんて必要ない。皆を奮い立たせる言葉が欲しい。
「みんなもう、へばったの?足が動かない?息が苦しい?そんな事は狼栄も一緒よ。私は言ったわよね。全てのボールを拾いなさいと……、出来るでしょう?これを最後にしないで、勝利の女神に微笑んでもらうのは私達よ」
「勝利の女神も、女王も、俺達のもんだ!第5セット取っぞ!」
拓真の気合いを入れる声に合わせて、皆が声を上げた。
「「「おおーー!!」」」