排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
*
フルセット12-11。犬崎の選手達にとって、こんなに長い試合は初めてで、未知の領域だった。身体が悲鳴を上げだしている。苦しい戦いだ。
ここで充のブロックが、大地のスパイクを捕らえる。『バシンッ』という音から1秒と経たずに、ボールが床に叩き付けられた。
谷が大きな声で叫んだ。
「13ー11ここで点差が開いたーー!!犬崎、勝利に一歩一歩と近づいています。狼栄苦しくなってきた」
苦しい狼栄がここで頼るのは大地だと、誰もが思っていた。だから自然と皆が大地へと視線を向けたその時、スパイクを決めてきたのはセッターの赤尾だった。セッターがボールを上げるのではなく、スパイクを打ってきたことで、犬崎の動きが一瞬乱れ、また点差が戻ってしまう。
ここでセッターが出てくるの……。
莉愛は奥歯を噛みしめる。
13-12。
やっと開いた得点が戻ってしまったが、負けたわけでは無い。
1点ずつ……着実に取っていきたい。
しかしここで、狼栄のブロックに洋介のスパイクが阻まれ、13-13で同点となった。
そして……。
「ドンッ」
大地のスパイク音が響き、狼栄がひっくり返し13-14となった。