排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
あれ?
どうしたんだろう?
莉愛が首を傾げていると、気弱な流星が四つん這いのまま、声を震わせた。
「姫川さん……俺達一年でさえも知っていますよ。王者狼栄……春高常連の強豪校」
「そうなの?」
呑気な莉愛に、拓真も青い顔のまま答えた。
「狼栄は現在群馬県のトップだよ。三年連続で春高に行っていて、今年も狼栄が春高確実だと言われている」
拓真の話しに「……はははっ」っと、皆から乾いた笑い声が聞こえてきた。悲しげな笑いが止むと、いつも強気でクールな祐樹が、ずれた眼鏡を直しながら気弱なことを言い出した。
「姫川さん、まずくないか?」
「何がですか?」
「狼栄だって、強いチームと試合をしたいはずだ。俺達とでは試合にもならない。逆に迷惑になるんじゃ……」
祐樹の言葉に莉愛はイラッとした。
「迷惑になる?どうしてそう思うんですか?やってみなくては、分からないでしょう?」
頬をポリポリと掻きながら、瑞樹も気弱なことを言ってきた。
「でもさ、ボロ負けするって」
瑞樹の言葉に皆が頷いている。それを見た莉愛はクルリと背を向けた。
「負けることしか考えていないようなので、私はマネージャーを辞めさせて頂きます」
体育館から出て行こうとする莉愛を、部員達が引き留める。
「うわー!待って!!」
「違う、違う。俺ら頑張るから」
一年生コンビが莉愛の前に立って、慌てだした。
更にその後ろで二、三年生も慌てながら弁解を始める。
「俺ら死ぬ気で頑張るから」
「狼栄がなんだ!!」
「強い奴ほど燃える」
ふぅー。
初めからそう言えば良いのに。
莉愛は呆れながら元の場所に戻り、練習試合のための練習方法について話し出した。