排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
*::*
狼栄大学高等学校との練習試合当日。
「うわ、すっげー広い!!」
「バレーボール専用の体育館とか……やばいな」
「天井高いなー」
興奮した犬崎部員達は完全に雰囲気に飲まれていた。そこへ狼栄のキャプテン赤尾正隆(あかおまさたか)がやって来た。
「今日はよろしくお願いします」
そう言って両者のキャプテンが握手を交わす。スポーツマンらしく爽やかに笑った赤尾が、アップのため場所を指さした。
「そっちのコート使ってもらってかまわないので、アップして下さい。終わったら練習試合を始めたいと思います」
「分かりました」
すると、赤尾もアップをするため、狼栄チームの方へと走っていった。
「じゃあ、着替えたらアップ始めるぞ」
拓真の指示を受け、部員達が返事を返した。
「「「うっす!」」」
拓真達がユニホームに着替え、アップを開始しようとしたところで、狼栄の体育館に「ドゴンッ」という鈍い音がなり響いた。
それは狼栄のスーパーエース、オポジットの大崎大地(おおさきだいち)が放ったジャンプサーブだった。強烈な一本、その音に拓真達は震え上がった。
「何だよあれ、ボールが凶器だよ」
そう言ったのは洋介だ。それにつられるようにして流星も口を開いた。
「腕、折れるんじゃないか?」
見てはいけない物を見てしまった時のように、狼栄のエースから目を逸らそうとする部員達に、莉愛がサラリと言った。
「あれ……?思ったほど、たいしたことないわね」
その言葉に拓真達は青ざめた。
オイオイオイオイ……何言ってくれちゃってるんだよ。絶対、今の声……向こうに聞こえたって……みんなこっち見てるよ。
ジットリと、こちらを睨みつけてくる狼栄のチームの視線に、拓真達の背筋が凍った。しかし、莉愛はそんな事を気にした様子も無く、みんなに声を掛ける。
「みんなは毎日誰のサーブ受けてきたと思っているの?大崎のサーブと、私のサーブどっちが怖い?」
莉愛の言葉に、皆の息を呑む音が聞こえてきた。
「「「姫川さんです」」」
ニヤリと笑う莉愛の笑顔に、部員達の顔が更に青ざめ、背筋に冷たい汗が流れた。アップの最後に、レシーブの練習をさせるため、莉愛は掛けていた眼鏡を外した。するとそこに、驚くほど美形なイケメンが現れた。莉愛が眼鏡を外した姿は、そこらにいる男子生徒や、芸能人よりイケメンだった。莉愛は中性的な、その顔で笑ってみせる。
すると、拓真達が震え上がった。