排球の女王様~私に全てを捧げなさい!


 体育館に響くボール音……。

「ドゴンッ」

「ドゴンッ」

 間を開けず鳴り響く音に、狼栄の部員達がどよめいた。

「うわ。何だ?」

「誰だよ、あいつ?」

「あんな選手、犬崎にいたんだ」

 狼栄の部員達が見つめる先に、莉愛の姿があった。眼鏡を外した中性的な顔の莉愛を、完全に男だと勘違いしているようだった。それもそのはず、莉愛はボールを高く上げると、それに合わせて大きくジャンプをする。それを思いっきりグーパンチで反対のコートに叩き付けた。すると体育館に強烈なサーブ音が響き渡る。

 そう、これが私達犬崎の秘策。莉愛のグーパンチからくり出される、サーブだった。ボールの中心をドンピシャで当てなければ成立しないこの技だが、莉愛はそれを簡単にくり出していく。

「もっと早いの行くよ」

 その声に狼栄の部員達が蒼白した。

「もっと早いのって……」

「はったりだろ?」

 すると「ドッゴンッ」という低い音が体育館に響き渡った。

「……マジか」

 息を呑む狼栄部員達の声が聞こえてくる。それを見ていた狼栄の赤尾が、大崎に耳打ちした。

「大地見たか、すっげーな?グーパンで正確にボール打つとか、原理的にありなのか?普通無理だろ。あいつ誰だ?見たことある?」

「いや、無いな。良いサーブを打つ……まあ、勝つのは俺達だけどな」

「そうだな。俺、大地のそういう所、好きだぜ」

「気持ち悪いし、全く嬉しくないが……」

 赤尾が大地の肩を抱き、嬉しそうに笑った。



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