排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
試合の高揚感と、今のレシーブを受けたことで、莉愛の中で何かがはじけ飛び、感情的に体が勝手に動いていた。
「パンッ」
莉愛が気づいた時には、大崎大地のほほを、思いっきり叩いた後だった。
「お前、大地さんに何やって……」
狼栄の一年生だろうか?誰かの声が聞こえてきたが、言葉は最後まで続かなかった。それは莉愛が泣いていたからだ。
莉愛は両目からポロポロと涙を流していた。
「男なら……男ならってなによ。私だって男に生まれたかったわよ」
莉愛の言葉に狼栄の部員達がどよめき、大崎はたじろいだ。
「……女?」
どうせそうよね。
私のこと男だと思っていたんでしょう。
いつもそう。
この身長と顔のせいで、男に間違われる事なんていつものこと……だからせめて髪だけでもと伸ばしていたのに、意味なんて無かった。
悔しい。
こんな所で泣いて、みっともない。
莉愛はグイッと袖で涙を拭き、両手で自分の頬を叩き前を向くと、大崎を睨みつけた。
「今日は負けましたが、次はうちが勝ちますから」
スッと大崎大地の横を通り過ぎ、莉愛は狼栄のコーチの元へと向かった。
「今日はこちらから練習試合をお願いしたと言うのに、最後にこのような
騒ぎまで起こしてしまい、すみませんでした。最後にコーチに相談と話をと思っていたのですが、私は今、平常心ではありませんので、話は後日でも大丈夫ですか?」
「あっ……ああ、かまわないよ。うちの大地がすまなかったね」
「いえ……では、また帰ったら電話しますので、よろしくお願いします。本日はありがとうございました」
頭を深く下げ、お礼の言葉を述べた莉愛は、犬崎の部員達に声を掛けた。
「みんな帰る準備が出来たら、撤収!」
荷物をまとめ、帰る準備をする莉愛を見つめ、大崎は放心状態になっていた。
「おい、大地大丈夫か?」
赤尾は自分の声に反応の無い大地が心配になり、大地の顔を覗き込みギョッとした。
「おいおい……お前、本当に大丈夫か?」
大地は耳まで赤くした顔を隠すこと無く、放心していた。