排球の女王様~私に全てを捧げなさい!

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それからは有意義な時間を過ごした。大地達が練習しているのを見学しつつ、コーチからのアドバイスを聞いた。練習法はためになることばかりで、こんなに他校の生徒に教えてしまって大丈夫なのかと、心配になるほどだったが、他校でもこれぐらいのことはしているのだと、言ってくれた。狼栄のコーチ金井貴広(かねいたかひろ)さんはとても厳しい人らしいのだが、熱心にノートを取る莉愛にとても丁寧に沢山の事を教えてくれた。そして金井コーチが首を捻る。

「ところで姫川さんは、女子バレーボールのチームには入らないのかい?」

 金井コーチの問いに、莉愛は頬を掻きながら「あーっ」と、少し眉を寄せながら答えた。

「女子バレーには、ライバルがいないから、つまらないんですよね」

 莉愛の答えに、金井は絶句した。

 ライバルがいないからつまらない。そう言うものなのだろうか?これだけ強ければトップに立てるというのに……。勿体ないと思ってしまうが、本人にその気が無いのだから仕方が無い。

「そうか……何かあったらいつでも来なさい。アドバイスぐらいはしてあげられるから」

「本当ですか?ありがとうございます」

 莉愛は深々と金井コーチに頭を下げた。






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