排球の女王様~私に全てを捧げなさい!


 そっと、ストレッチ中の大地の側まで行ってみる。

「大地、身体硬くない?」

「あぁー」

 莉愛から視線を逸らす大地を見た赤尾が、クククッと笑いながら莉愛に耳打ちをした。

「莉愛嬢、こいつストレッチ苦手なんだよ。特に体を柔らかくする系のやつ……。させるのに苦労するんだ」

 そうなんだ。

 ストレッチは筋肉を緩めてくれたり、筋肉痛を和らげたり、怪我をしにくくしたりするために、運動の前後には必要なものなのに。

「大地、ちょっと良い?」

 そう言うと莉愛は、床に座り、一人で前屈をしていた大地の後ろから、覆いかぶさった。それから体を密着させると、全体重を掛けて背中をゆっくりと押していった。

 大地は莉愛に覆いかぶされるように背中を押され、背中に感じる莉愛の柔らかい胸の感触と、温かさにたじろいだ。

「えっと……莉愛、ちっ……ちょっと待って」

「待たないよ。大地、大丈夫だから、体硬くしないで、ゆっくり息吐いて」

 莉愛の優しい声が、大地の鼓膜刺激する。

 更に莉愛がグぐぐっと大地の体に、体重を預けてきた。すると莉愛の長く柔らかい髪が、頬をくすぐる。






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