排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
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狼栄での見学&ストレッチ事件の帰り道。現在の時刻は19時を過ぎていて、辺りは真っ暗になっていた。莉愛は桃ノ木川のサイクリングロードを大地と並んで歩く。昼間のここは小学生の通学路になっていて人通りも多いが、夜は所々に街頭があるのみで、人はあまり通らない。
金井コーチも心配していたし、大地に送ってもらって正解だったかも……。
チラリと隣を歩く大地を盗み見て、莉愛の心臓がドキンッと跳ねた。大地はスラリと背が高く、均一のとれた顔で、時々目が合うと、フッと笑う。そんな顔をされれば、莉愛でなくても皆顔を赤くさせるだろう。現に大地が爽やかに笑う顔に、女子は頬を赤くするするのだと、理花と美奈が言っていた。莉愛はそんな男子と、肩を並べて歩いていることが不思議だった。
大地って、格好いいよね。
犬崎に謝りに来た時にも、女の子達に囲まれてたし、理花と美奈も格好いいって言ってたもんね。
「ふぅーっ」と溜め息を付くと、心配そうに大地が顔を覗き込んできた。
「どうした?疲れたか?」
大地は優しい。
こうやってすぐに、こちらを気遣ってくれる。
毎日のメールも……。
他の女の子とも、メールとかしてるのかな?
そう思うと、胸の奥がキュッと締め付けられた。
俯く莉愛の様子に、大地が眉をひそめた。
「本当に大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。今日はすっごく良い時間を過ごさせてもらったよ。狼栄のコーチや大地達にもすっごく感謝だよ。凄く良い時間を過ごした分……後悔もした」
「後悔?」
「うん。私、高校入ってから、ずっとすねてたから」
「すねてたって?」
そう、私はずっと、すねていた。駄々っ子の子供のように。