排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
このまま無視を続けようと思っていた莉愛だったが、思っていたことが口から飛び出していた。
「島谷さんジャンプサーブの時、トス上げがブレブレで、コントロール悪いですよね?もっとサーブ練習した方が良いですよ」
「なっ……たかがマネージャーに言われたくない」
「そうですか……でも、あんなサーブなら、俺でも上げれると思いますけど?」
自分の事を俺と言った莉愛は、鼻で笑い、更に島谷を挑発した。
「はぁ?お前良い度胸だな。コートに立て、大学生の本気のサーブを受けてみろ」
「良いですけど」
島谷は青筋をたてながら、コートに立った。
「くそガキが、調子に乗りやがって、俺のジャンプサーブを舐めるなよ」
島谷はブツブツと独り言を言いながら、定位置に付いた。それから天井高くボールを上げると、ジャンプサーブを打ち込んだ。しかしそのボールは線を越え、アウトとなった。
「うわっ。島谷のやつ、高校生……しかもマネージャーに容赦ないな」
「仕方ないだろ、挑発したのはあいつだし」
休憩中の大学生達が、二人の様子を見つめながら笑っていた。しかしそんな風に笑っていた大学生達が、数分後にはポカンと口を開けた状態のまま、息を飲むこととなる。
「やっぱり島谷さん、コントロール悪いですね」
莉愛は島谷に、しれっと言葉でとどめを刺す。すると、島谷がワナワナと怒りで震えだした。島谷は何も言わずにもう一度ボールを高く上げると、先ほどよりも更に早いサーブを莉愛めがけて打ち込んだ。しかし莉愛はそれをいとも簡単にレシーブし、天井へと向かって打ち上げた。綺麗に上に上がったボールを莉愛は両手で受け止める。
「まあまあですね」
「まあまあだと……。お前マネージャーじゃなくて、選手だったのかよ」
「え?違いますよ。マネージャーです」
「ウソつけ、そんなうまい奴がマネージャーなわけ無いだろう」
ああ、うるさいな。そろそろ10分経つ頃だし、休憩が終わるというのに、黙ってくれないかな。少し考え込んだ莉愛が、一つに縛っていた髪をほどき、背中まである長い髪をなびかせた。
「島谷さん練習頑張った方が良いですよ。女の私でも取れるようなサーブ打っているようじゃ、何処にも通用しませんよ」
莉愛と島谷の様子を見ていた大学生達が、動揺を見せた。
「おいおい、女の子だったのかよ」
「にしても、あのサーブ簡単に取るとか……」
「すっげー、格好いいじゃん」
パン、パン、パン。
コーチが手を叩いて、全員に声を掛けた。
「10分経ったぞ。休憩はお終いだ。次は練習試合をするぞ。負けたチームはペナルティーで走り込みだ」