排球の女王様~私に全てを捧げなさい!

 *

 体育館に唸るボールの音。

「おいおい、あいつどうしちゃったんだよ。今日、何本サーブ打った?」

「いや、知らんが、朝からずっと、あの調子だよ」

 皆の見つめる先には島谷がいた。朝からずっとサーブ練習を続け、汗だくになっている姿に、皆が唖然としている。

 島谷さんの生まれ変わるって……。

 練習を頑張るって事だったの?

 莉愛が島谷の様子を見ていると、群大のマネージャー磯田由里(いそだゆり)さんが声を掛けてきた。

「莉愛ちゃん昨日、島谷と何かあった?」

「あー、えっと……」

「言いにくいこと?」

 そういうわけでは無いが、言っても良いものなのか考え込んでいると、由里が面白そうに、こちらの顔を覗き込んできた。

「大丈夫、誰にも言わないから」

「その……生まれ変わるから、明日からの俺を見ていてと……」

「それで、莉愛ちゃんは何て答えたの?」

「いえ、何も……。でも島谷さん練習頑張るって事だったんですね」

 莉愛の話を聞いていた由里が、小刻みに震えていた。

 由里さんどうしたんだろう?

 莉愛が由里に声を掛けようとしたところで、我慢の限界とばかりに、由里がお腹を押さえながら大笑いを始めた。

「ぶっ……あっはははは!莉愛ちゃん天然?それにしてもすごいよ莉愛ちゃん、あいつを本気にさせるなんて。実力はあるのに、いつも練習さぼる島谷を別人みたいに変えるなんてさ。愛の力だね」

「愛?どうして愛なんですか?」

「そうでしょう。生まれ変わった自分を見てもらいたいなんてさ。変わるから好きになってくれってことでしょう。それで、どうするの?」

「困ります。私、付き合っている人いますから」

「えっ、そうなの?」

 由里と莉愛が楽しく恋バナに花を咲かせていると、そこに島谷がやって来た。

「莉愛ちゃん見てた?今日の俺どう?」

「どうって言われても……」

「俺のこと好きになった?」

 この人、バカなのかな?

 昨日、彼氏がいるって言ったよね?

「島谷さん、私には彼氏がいるので、好きにはなりません」

 島谷が、チーンっと固まっていると、由里がまた大笑いを始めた。

「島谷、撃沈ーー!!あはははは!」


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