排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
屈託の無い顔で笑いながら、津田拓真(つだたくま)が言った。そんな拓真は、人の話は聞かないが、人望はあるようで、拓真の声につられて男子生徒が集まってくる。
「ちなみに俺が、キャプテンでポジションはミドルブロッカーだ。で、こっちにいる眼鏡が近藤祐樹(こんどうゆうき)アウトサイドヒッターで三年、その隣が立石充(たていしみつる)オポジットで二年、小池流星セッターで一年、滝林洋介(たきばやしようすけ)ミドルブロッカーで一年、竹之内瑞貴(たけのうちみずき)二年リベロだ。ちなみに、うちのチームは先輩後輩関係なく、下の名前で呼び合うからよろしくな」
「分かりました」
「姫川下の名前は?」
「は?どうしてですか?」
「今、言っただろう。うちのチームは下の名前で呼び合うんだよ」
強引に話を進める拓真に、莉愛は冷ややかに答えた。
「私は姫川で結構です」
「…………」
シンと静まり返った体育館に、一人の男子生徒の笑い声が響き渡った。
「にゃははははっ……姫川さんきっついねー。まあ、俺は良いけど」
そう言ったのは、二年生のリベロ瑞樹だった。瑞樹はバレーボール選手にしては小柄な体型をしているが、リベロというポジションは、小柄な選手でも活躍できるポジションのため、問題はない。薄茶色の髪に、細い瞳のせいか、猫のような印象を受ける瑞樹は、「にゃはは」と笑った。すると皆も瑞樹につられて笑い、シンと静まり返っていた体育館の空気が戻った所で、拓真が気を取り直した様子で、莉愛に声を掛けた。
「じゃあ姫川、来週練習試合があるから、早速その準備をお願いしたいんだ」
「分かったわ」