排球の女王様~私に全てを捧げなさい!

 
 不穏な空気をまとい、声音を低くした莉愛が、高橋と翔の後ろに仁王立ちすると、二人がビクリッと飛び上がった。私の声に顔を蒼白にさせた二人が、ゆっくりと振り返る。

「りっ……莉愛さん?今の話し聞いてました?」

 翔がガタガタと震えながら、何故か敬語で尋ねてきた。

「すまん莉愛、お兄ちゃん莉愛が心配で……直接聞いても話してくれないと思ったから、高橋に頼んだんだ」

「高橋さんもグルだったんだすね。道理で、いろいろ聞いてくると思ったんですよ」 

 怒りで震える莉愛に、高橋が申し訳なさそうに、頭を下げた。

「姫ちゃんごめんね。こっちも翔さんに練習見てもらえるなんて、そんな機会無いから必死になっちゃって」

 分からなくも無い。プロの選手に練習を見てもらえるチャンスがあるなら、どんな手を使っても見てもらいたいと思うだろう。私だって、犬崎のために、あっちこっちに電話して、練習試合お願いして、使える物は使うって感じで……でも、そのコマが私って……。

 先ほどの兄に対しての感動を返してもらいたい。

 腕を組み頬を膨らませ、プイッと視線を逸らした莉愛に翔は焦った。

「本当にごめん莉愛」



 現在、そんなこんなで、二人が莉愛の前で正座をしている状況となっている。

 両手を合わせる二人を見つめ、莉愛は溜め息を付いた。

「お兄ちゃん、高橋さん、償いは練習でお願いします。二人の持ち得る全ての物を犬崎の皆のために使って下さい。良いですね?」

「「承知しました」」

 胸に手を当て、二人が嬉しそうに跪いた。




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