排球の女王様~私に全てを捧げなさい!

 *

「どうした、何をへばっている。死ぬ気で食らいつけ」

 翔がスパイクを打ち込み、犬崎の部員達が次々にレシーブを返していく。

「随分触れるようになってきたじゃないか」

「「「うっす!」」」

「最後に練習試合するぞ。犬崎と群大ごちゃ混ぜでやってみるから」

 犬崎対群馬国際大ではなく、大学生に混ざってやるの?

 ノートを取りながら莉愛は顔を上げた。

「じゃあ、チーム作ってみて」

 大学生の方が人数が多いけど、5チームは作れるかな?

「こっち一人足りないんですけど」

「あー。それなら莉愛そっち入って」

「えっ、私で良いの?」

「練習試合なんだから良いだろう?」

 うそ、嬉しい。

 皆が楽しそうにバレーしている姿を見て、ウズウズしてたの、お兄ちゃんにはバレてたかな?チラリと翔の方へと視線を向ける。すると翔がウインクをしてきた。

 お兄ちゃんにはバレバレね。

「よろしくお願いします」

 莉愛が遠慮がちに挨拶をすると、高橋が嬉しそうに手を上げた。

「姫ちゃんとバレーが出来るなんて光栄だよ。よろしくね」

 それから3セットマッチの試合が始まった。

「充、どうした。ミドルブロッカーなら手をだせ、手を出さなければ、ブロックは出来ないぞ」

「流星バネ使え、手を伸ばして叩き付けろ」

 二面あるコートの外から適切なアドバイスが飛び交う。

 向こうは大丈夫そうね。それならと、莉愛は目の前のボールに集中した。

「姫ちゃん、一発目来るよ」

「はい!」

 反対のコートから島谷がジャンプサーブをするのが見える。この数日でサーブが一段とうまくなった。それは莉愛への重い愛?のせいであるのだが、それに莉愛はいまいち気づいていない。

 わー。綺麗にボールが上がるようになったなー。それに姿勢もすごく良くなった。関心する莉愛の横をボールが通り過ぎ、それをリベロが上げた、それを高橋がトスして上げてくれる。

「姫ちゃん!」

 その声に合わせて莉愛が後ろから走り出し、バックアタックの姿勢に入る。莉愛の空中姿勢は美しい、まるで止まっているかのように見える。その美しさに見惚れているうちに、ボールは床に沈んでいた。

「すっげー」

「見たか今の?止まっているように見えたな」

「空中であんな風に姿勢保てるもんなのか?」

「それに威力もコースもえげつな!」

 楽しそうにバレーをする莉愛を見ていた翔が、嬉しそうに笑った。





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