排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
「大丈夫だって、莉愛すっごく可愛く仕上がってるから」
「莉愛、覚悟を決めてね。莉愛が出てこなかったら、大地くん不戦敗にするから」
ひぃー。
理花さん鬼なんですけど。
「そうね。莉愛、そうならないようにするには……どうすれば良いかわかるわよね?」
美奈さんまで……鬼!
二人に肩をつかまれた莉愛は、ゴクリと唾を飲み込むと頷いた。
「今度こそ、始めるからね。声を掛けたら出てきてね」
「莉愛、私達を信じて!」
二人はそう言うと、舞台の真ん中に立ってマイクを握り絞めた。マイクで喋るならメガホンはいらない気がするが、今や二人のトレードマークと化したメガホンを手放す気は無いらしい。
「「みなさん大変長らくお待たせいたしました。莉愛嬢を賭けた男の勝負が始まろうとしています。その前に本日の主役、莉愛嬢こと、姫川莉愛の登場です!」」
双子のように息を合わせた二人の司会進行ぶりに、莉愛は驚きを隠せない。
いつの間に、打ち合わせをしたのかしら?息ピッタリすぎでしょ。
そんな事を思いながら、おずおずと舞台袖から顔を出し、ゆっくりと舞台の中央までやって来たのだが、体育館がシンと静まり返ってしまった。
ほらー。
だから言ったのに……みんな引いてるよ。
そう思ったその時、体育館が揺らぐような歓声が上がった。
「うっわー。美人!」
「めっちゃ美人!あんな綺麗な人が三年にいたんだ?」
「俺も勝負したい」
そんな声があっちらこっちから聞こえてくるが、莉愛は硬直したまま動けずにいた。
みんなだまされてるよ。
これは理花と美奈のお化粧マジックだから。
そう思いながらも、莉愛は胸を撫で下ろした。
皆の反応を見る限り、一応は女に見えているようだ。
ホッと溜め息を漏らす莉愛の様子を、凝視する二人がいた。
「莉愛ちゃん、めっちゃ美人!やっぱり俺の彼女にしたい。絶対彼女にする」
「はっ、莉愛は元々俺の彼女だから」
一笑いした大地が島谷を睨みつける。そんな二人の様子を見ていたギャラリーもヒートアップしていく。
「おーやれやれ」
「どっちも頑張れ」
ざわめく体育館に、理花と美奈の声が響き渡る。
「それでは皆様、すぐに勝負と言いたい所ですが、二人の勝負の前に、本日二人のジャッジをしてくれる、スペシャルゲスト紹介したいと思います。それはこの人!」
「「バレーボール日本代表の姫川翔さんです!」」