排球の女王様~私に全てを捧げなさい!



 その名前を聞きいた人々から「わーっ」と、歓声を上げる。体育館が熱気で何度か上がった様な気がした。

 お兄ちゃんて、すごい人だったんだな。

 今更ながら、そんな事を思った。

 手を軽く振りながら現れた翔に女生徒が、黄色い声を上げている。そんな声を聞いても翔は、なれた様子で手を振り続けている。

「キャー!翔様」

 しっ……翔様って……。

 自分の兄が、そんな風に呼ばれていることに、驚愕する。そう言えば、お兄ちゃんには二つ名があった様な……。

「「せーのっ、スパイク王子!!」」

 そう!

 それっ!

 スパイク王子!!

 初めて聞いた時、ドン引きしたんだよね。

 お兄ちゃんも、「何でも王子を付ければ良いってもんじゃない」と、苦笑してたっけ……。

 しかし、今ではその二つ名がしっくり来るほど、定着している。天才姫川翔、二つ名をスパイク王子。その兄が今マイクを持ち、楽しそうにルールの説明を開始した。

「それではルールを説明するね。ルールは簡単、交互にサーブをに打って、レシーブが出来なかったら相手に一点。レシーブ出来れば本人に一点。10本やって、得点の多い方が勝ちだよ。二人とも説明は以上、質問はあるかな?」

「「大丈夫です」」

 大地と島谷の声が重なり、二人とも嫌な顔をして、にらみ合った。ヒートアップしていく二人を、更に煽るように理花と美奈が大きな声を張り上げる。

「さあ、いよいよ莉愛嬢を賭けての勝負が始まります。勝って莉愛嬢を手に入れるのはどちらか?では、大地さん、島谷さんジャンケンでどちらが先にサーブするかを決めて下さい」

 先にサーブ権を得たのは島谷だった。

「シャーー」

 サーブ権を得た島谷が声を上げると、大地が冷たく言葉を言い放つ。

「大人げない……」

 それを聞いた島谷の米神に、青筋が浮かび上がる。

「くそガキが……」

 島谷は苛立ちを隠す様子も無く、自分の立ち位置へと移動を開始し、二人はバレーボールコート上に立ち、対面した。








< 76 / 129 >

この作品をシェア

pagetop