排球の女王様~私に全てを捧げなさい!

 アップのため私達は二面あるコートの一つに入ったが、みんなの顔色は悪く、声も出ていない。軽くアップするため優しくボールを出しても、ほとんどのボールを取り損なっていく。それを見ていた観客席のギャラリーから、笑いが漏れた。

「あははっ、あれ大丈夫かよ」

「下手くそだな。俺でも取れるぜ」

 外でアップしてきたから、試合前は軽く体を温めるだけにしようと、思っていたのになぁ。

 全くもう。みんなの目を覚まさせてやる!

 莉愛は立ち尽くしている部員達目掛けて強烈なジャンプサーブを打ち込んだ。それは『ズドンッ』と鈍い音を立てて床に沈む。

 みんなに届け……。

 拓真達がハッとした後、ボールを視線で追う。

 莉愛はバレーコートのネットの下をくぐり、唖然とボールを見つめる部員達の元までやって来た。そして一つにまとめていた髪をほどき、着ていたジャージを肩に掛け腕を組む。

「やっとボールを見たわね」

「えっと……姫川……?」

 拓真が情けなく眉の寄った顔で、莉愛を見た。

 姫川じゃないわよ。

 これでもダメなの……。





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