排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
怒りで、莉愛の背後にゆらゆらと黒いオーラが立ち上っていく。
それでは仕方が無い。
莉愛は拓真の頭を右手で鷲摑むと、床に向かって振り下ろす。バランスを崩した拓真の膝が折れ、そのまま床に膝を付いた。
「皆、私の前に跪きなさい!」
皆が跪き床を見つめる中、莉愛がもう一度腕を組み直し、冷たく言葉を言い放つ。
「お前達は、試合を始める前から何を諦めているの?バレーはボールを見て、触れなくては成り立たないスポーツなのよ。それなのに何故ボールを見ないの?」
「ボールを見ていない……?」
拓真が、ボソリと呟いた。
あっ……思い出してきたかな?
大丈夫、思い出せるよ。
莉愛が確信を持って声を上げる。
「私がお前達になんて言ったか覚えてる?私は勝利を捧げなさいと言ったはず。そしてお前達は勝利を捧げると約束した。その言葉を……誓いを、違(たが)えるか!!」
少しずつ、拓真の顔に生気が満ちていく。
「俺達は……捧げると……約束した……」
拓真の言葉をきっかけに、部員達全員の脳裏に練習の日々が走馬灯のようによみがえっていく。
ああ、良かった。
思い出したみたいね。
莉愛は顎を上げ、妖艶に微笑んだ。
「思い出した?それなら分かるわね。顔を上げて死ぬ気でボールを追いかけるのよ。そして私に勝利を捧げなさい」
「「「おおーー!!」」」
犬崎のみんなの雄叫びが、体育館に響き渡った。