排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
*
「ピーー!」
試合開始のホイッスルが鳴った。
サーブ権を得た高崎英明高等学園の5番西野が、思いっきりサーブを打ち込んできた。
「もらったぜ!」
そう呟いた西野だったが、ボールは床に触れること無く「パンッ」と肌に当たる乾いた音を立て、天井に向かって上がった。ボールを上げたのは12番リベロの瑞樹だ。
「上げたぞ。祐樹頼む」
瑞樹から繋げられたボール。これを必ず相手のコートに沈めたい。
皆がそう思った。
洋介が走ってくるのを確認した祐樹は、絶妙なタイミングでトスを上げると、洋介が相手のコートへとスパイクを打ち込んだ。
バンッという小気味よい音を立てて、ボールが跳ねた。
シンと静まり返る体育館に、洋介の雄叫びが響く。
「シャーー!!」
犬崎の速攻が決まった瞬間だった。
洋介の雄叫びに合わせるように、拓真達も声を掛け合う。
「瑞樹、流星、洋介ナイス!」
先制点、三人とも良くやってくれたわ。これで流れはこっちに来た。
莉愛もみんなと同じように、三人に声を掛けた。
「瑞樹、流星、洋介ナイス!」
その声に皆が一斉に、莉愛へと視線を向ける。
なっ……何?
「マジかよ……姫川さんが名前を呼んだ」
「かたくなに苗字呼びだったのに」
「なんか……感動……」
「何で三人だけ?」
「俺らは?」
「三人だけなんてずるいぞ」
瑞樹、流星、洋介、祐樹、充、拓真の順に驚きの声が上がる。
感動するところ、そこ?
もっと先制点を取った事を喜んでよ。
苦笑いする莉愛をよそに、みんなが声を掛け合う。
「姫川に名前を呼んでもらえるように、頑張るぞ」
「「「おおーー!!」」」
えぇーー?!
だから、気合い入れるところは、そこじゃないと思う……。