排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
*
「ピピーー!!」
試合終了のホイッスル。
「ゲーム終了2-0で勝者犬崎高等学校」
審判のジャッジ後、拓真が歓喜の声を上げる。
「勝ったぞ!」
「「「シャーー!!」」」
今日一番の笑顔を見せる犬崎高等学校のメンバーとは対に、高崎英明高等学園のメンバーは肩を落とし小刻みに震えていた。涙を必死に我慢しているのだろう。勝者が決まれば敗者も決まる。勝負の世界は、白黒がはっきりしている。しかたのないことだ。引き分けは無いのだから。
勝利を喜び合う私達の元に、西野がやって来た。
「お前ら練習試合の時は手を抜いていたのか?そうやって俺達を油断させて、あざ笑っていたのか?」
はぁ?
この人は何を言っているの?
最後の最後まで失礼すぎる。
不躾な西野の言葉に、前に出ようとした莉愛を制し、前に出たのは拓真だった。
「別にあざ笑ってなんていない。敗北したときの悔しさを知っているのは俺達だ。俺達はもう負けたくない。勝利を捧げると約束した。だから本気で……必死に練習して、ボールを追いかけて、繋いだ。その結果が今日出たまでだ」
拓真の言葉に、チームが一丸となった気がした。
「俺達だって…俺達だって必死に練習したんだ……」
悔しそうに両手を握り絞め俯く西野の肩を、時東が優しく叩いた。悔しくて仕方ない様子の西野が更に食らいついてきた。
「俺達とお前達の差は何だったんだ?!」
莉愛は溜め息を付きながら、西野の前に立った。
「そんなに悔しいなら最後のボールをどうして諦めたの?全力で走れば取れるボールだったでしょう?あなた達は試合終了のホイッスルが鳴ってもいないのに、自分達の中で試合を終了……放棄した。その時点であなた達の負けだった」
「それは……」
高崎英明高等学園のメンバー全員が、力なく俯いた。
「私達は上に行く、私達は諦めない。高崎英明高等学園の皆さん、悔しかったのなら下克上お待ちしています。みんな行くよ」
顔を上げた高崎英明高等学園のメンバー全員の喉が、ゴクリと鳴った。莉愛の妖艶で格好いい姿、発言に見惚れるしかなかった。
「やばっ……」
「すげー……格好いい」