青春の備忘録
 目的の洗い場の前について、水道が空くのを待っている間に通ってきた道をチラリと見ていると、廊下にいる生徒全員が私のほうを見ているのに気がついた。
 (え?どうしてみんな私の方見てるの……!?)
 私は明らかに動揺していたと思うが、おそらく8組と9組の人たちからしてみると、入学してから見たことのない人が来たので物珍しかったのだろう。
 入学したての時の私はひとつ結びの黒髪に眼鏡、身長は少し高めだったけれど、あまり目立つようなことをしたつもりもなかったので、ただ人々の余所者(よそもの)に向けられた視線に疑問を持ちながら耐え、雑巾を濡らしてそそくさと教室に戻った。
 教室に戻るときは図書館の前の廊下ではなく、外にある渡り廊下を渡った。
 緊張で心臓がバクバクと拍動している。
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