青春の備忘録
 少し目を凝らしてみると、中庭の見える窓の方を向いて誰かと話している様子の野球部がいた。
 ちょうど柱があって見えにくくなっているので誰と話しているのか、そもそも誰かがいるのかすら見当がつかない。
 「すみません、もう時間がないので失礼しますね」
 腕時計の針は授業が始まるまであと3分という時刻を指していた。
 微妙な雰囲気から会釈をして去ったが、良太の姿が見えないことが気になって、後ろを振り返った。
 柱の影からちらりと顔を出している人がいる。
 その光景を見た私の目は、大きく見開いた。
 あのぱっちりとした目、間違いなく良太だった。
 まさか、ずっとあの影にいたのか?
 頭に思案が巡ったが、ここはひとまず授業に集中しようと切り替えた。
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