青春の備忘録
 いや、そうだ。
 私はこれを渡すために来たんだった。
 「あの、あとひとつ。上原くんに渡したいものがあるんだけど、上原くん……いる?」
 私は集団になっている野球部の後ろを見ようとしたが、特に人影はない。
 「上原、田川さんが渡したいものあるってよ」
 右端の方にいた人たちが横にサッと動くと、そこには少し縮こまったような格好の良太がいた。
 先月からだが、私が目の前に現れると逃げたり隠れたりすることが多くなったような気がする。
 ツンデレなのか照れ隠しなのか、その真意は分からないが、良太は私が目の前にいるのに気づくとすぐ、教室の外に出ていってしまった……と思ったが、教室の前の廊下を通り再び教室に入った。
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