青春の備忘録
 階段を上がって目の前にある教室は9組の教室なので、サッと進路指導室にいってテキストを受け取って帰ろうと決めていた。
 「あ!田川さんだ!」
 廊下に出てすぐ、そんな声が聞こえた。
 まずい、このまま無視して行くか……?
 いや、そんなことはできるのか?
 「田川さん、こんにちは!」
 「こんにちは」
 声をかけてきたのは野球部だったが、見慣れない顔だった。
 まさか、9組の人だろうか。
 振り返った先には、いつもの人たちが廊下にいた。
 「田川さん、俺、田川さんに聞きたいことあるんすけど」
 8組の教室の方からやってきたサッカー部らしき人。
 聞きたいことと言われても、おそらく(ろく)なことではない。
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