青春の備忘録
 ここで責任転嫁をするわけではないが、先に好きになったのは私ではなく彼なのである。
 今考えてみれば、1年生の春に声をかけてきた時から多少気になっていたのではないだろうか。
 気があると思われることはこれまでに幾度もあった。
 私が見落としていただけで。
 単純に鈍くて気がついていなかったということもあったが、あえて見落としていたときもある。
 好意的な反応をしてはおくが、そこから先は自分では進まない。
 きっと揶揄(から)われていることはないのだろうが、毎回起きることの異常さに驚いてしまっていたのだ。
 私はその場を後にして進路指導室でテキストを受け取り教室に戻った。
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