青春の備忘録

8月──美しい最後

 夏休みは通常通り、勉強漬けの夏休みであった。
 受験が迫っているということもあって、毎日が模試の練習の連続。
 しかし「本業」に忙しいのは、受験まで半年を切った勉強組だけではない。
 ある日曜日、私はテレビに(かじ)り付いていた。
 高校野球、夏の地方大会のテレビ中継があるのだ。
 いつも接している「彼ら」だから、いや、それ以上に野球が好きだから。
 どんなことがあっても、母校を、チームを、そして、それでも大好きな彼を応援したい一心で、固唾(かたず)を飲んで試合を見守った。
 現場に行くことはできなくても、きっと応援は届くだろうと思いながら。
 試合ではホームランが出た、二遊間の固い守備が光っていた。
 私の大好きな彼も、得点源となるヒットを打ち、その一打が鮮やかな打線を目覚めさせた。
 眩しいほどにかっこよかった。
 ヒットやファインプレーを見る度、涙が出た。
 結果は惜しくも敗退となったが、私が見た高校野球の中で最も美しい試合だった。
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